ひき逃げ事故を隠ぺい(偽装工作)した場合の罪と責任について

 

ひき逃げ事故を隠ぺい(偽装工作)した場合の罪と責任について

ひき逃げ事故を起こしたにも関わらず、現場から逃走して隠ぺい工作をした場合には、刑事責任だけでなく、民事責任においても大きく影響を及ぼします。

また周囲からの信頼を落とすことになり、職を失ったり、店に客が来なくなったりするなどの社会的制裁も受けることもあります。

刑事責任について

隠ぺい行為や偽装工作は、依頼した側だけでなく、それを受けた方にも罪が問われます。隠ぺいが発覚した場合には、依頼者は本来受けるはずの罪に加えて、以下の罪が加わります。

刑法103条 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪

罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。(刑法103条)

参考記事:交通事故の身代わりの罪と罰則について

 

民事責任(損害賠償請求)について

隠ぺい工作という不誠実な対応で、被害者や遺族に対して精神的苦痛を与えたとして、損害賠償額が増額される判例は数多く存在します。

裁判所が増額する慰謝料は内容により、異なり一概にはいえませんが、次の点が重視されています。

(1)被害者の被害状況

隠ぺいによる精神的苦痛による損害賠償請求では、死亡事故の場合が最も重く、後遺症が残るかどうかなども損害賠償額に影響を与えます。

 

(2)加害者の逃走の仕方

被害者を引きずって逃走するなど、悪質な逃げ方だった場合には、重く受け止めます。

 

(3)証拠隠滅の行為

修理したり、壊したりして損傷個所を大きく変えたり、廃車手続きで証拠車両を消す行為。知人などに嘘のアリバイ工作を依頼したり、身代わりになってもらうなど

 

具体的な判例

死亡事故で、遺族らに対して近親者固有慰謝料を認めた判決

札幌地裁 平成18年7月19日判決

増額慰謝料額:700万円

平成14年12月30日午後5時40分ごろ、北海道山越郡の片側1車線道路で、道路を横断していた女性(61)が加害者の車両に衝突され、対向車線に転倒しているところを別の車にはねられ、亡くなった事故がありました。

この事故で、最初に衝突した自動車の運転手は、事故現場から逃走しており、知り合いにドアミラーを修理させ、口止めさせ、さらに更に別の知人にも虚偽のアリバイを依頼して、捜査に訪れた警察官に対して事故を起こしていないと供述していました。

この事故に関する慰謝料は、本件被害者の2,400万円とは別に、配偶者に250万円、同人以外の遺族らに各150万円とするのが相当であるとされました。

 

重傷を負わせた女性に対して、隠ぺい工作による慰謝料増額

大阪地裁 平成9年12月11日判決

増額慰謝料額:130万円

美容師見習いの女性被害者(22)が原付バイクを運転中に、対向からの右折車と衝突し、ひき逃げされ、大怪我を負った事故がありました。

加害者は車両の修理を依頼するなどの証拠隠滅をはかり、最終的には証拠が残らぬように車を廃車にしてしまうほどの徹底した証拠隠滅を行いました。

事故内容から慰謝料は370万円と考えられるものですが、逃走と隠ぺい工作による精神的苦痛を受けた事も考慮され、500万円となりました。

 

悪質なひき逃げ事故の隠ぺい工作

東京地裁八王子支部平成15年5月8日判決

増額慰謝料額:600~800万円

飲酒運転の小型貨物車両が、専門学校に通う男性(19)の運転する原付バイクをはねて、そのまま90mにわたり引きずって逃走し、死亡させた事故です。

加害者は飲酒運転の発覚を恐れて、事故後コンビニでワンカップの日本酒を購入し、すぐに飲み、飲酒運転を隠ぺいしようとしました。

この事故での慰謝料の相場は2,000~2,200万円ほどと考えられますが、裁判所では2,800万円の支払いを命じています。

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