無人の車が動き出し、人を死傷させてしまった事故の自動車保険の取り扱いについて
運転席に人が誰も乗っていないにも関わらず、無人の車が動き出し、人を死傷させてしまった場合
無人の車で、他人を死傷させてしまった場合には自賠責保険と任意保険の両方を利用することができます。
これは運転中の事故だけではなく、自動車の管理などに起因して生じた損害賠償に対しても保険が適用されるためです。
しかし保険金が支払われない注意点があります。
保険金が支払われないケース
被害者が他人でない場合
対人賠償保険が支払われるためには、被害者が他人である必要があります。
他人についての定義は、自賠責保険と任意保険とで範囲が異なるため、注意が必要です。
自賠責保険 ・・・運行供用者・運転者以外の者。
対人賠償保険・・・他人のみ
つまり、自賠責保険での他人は、運転手と車の持ち主以外が他人に該当するため、子供や配偶者などの親族に対しても保険金が支払われます。
しかし任意保険の場合には、基本的に家族は他人にならないため、保険金が支払われません。
故意による事故
故意で起こした事故には、自賠責保険も任意保険も支払われることがありません。
「未必の故意」については、自賠責保険では免責になりません(確定的故意のみ免責)が、任意保険では故意免責となることがあります。
免責時効の場合
また戦争・暴動・地震・噴火・台風・洪水・高波・津波・原子力などの危険によって生じた損害も免責扱いとなっています。
政府保障事業について
”故意による事故”と判断された場合などには、加害者は保険会社に対して保険金請求をすることができなくなり、被害者が損害賠償請求を受けられなかったり、受けるまでに時間がかかったりすることがあります。
そんなときには、被害者救済の観点から、被害者側は「政府保障事業」を利用することで、自賠責保険と同程度の法定限度額の範囲内で、政府(国土交通省)がその損害を填補することができます。
政府保障事業の特徴
- 政府保障事業に請求することができるのは被害者だけになります。
- 審査が自賠責よりやや厳しい傾向にあり、請求から支払いまでの期間が長くなる傾向にあります。
(平均的にはひき逃げ事故などの加害者不明で4か月程度、無保険だと7か月前後かかります。) - 治療費は自由診療とならず保険診療で計算されます。
- 填補された金額は政府が被害者に代わって加害者に請求します。
- 被害者を救うための制度であり、加害者は政府が立替えたお金を全額弁済することになります。