保険会社が役員に休業補償をしなかったケース
休業補償について
サラリーマンが交通事故にあい、休業した場合には源泉徴収票や休業証明書を提出することで休業補償を受ける事ができますが、会社役員の場合には少し取り扱いが変わってきます。
役員報酬については基本的に休業日数に関係なく満額支給されるものですので、休業による所得減少がないと考えられますが実態とは乖離した側面があります。
そこで会社の役員の場合には、休業補償は次のように取り扱われます。
役員報酬については役員報酬部分と労務対価部分に分けて考える。
零細企業や社員が社長1名しかいないような実質的には個人事業である場合には、役員報酬として計上されていても全額労務対価部分とみなします。
会社の規模が大きくなるにつれて、役員報酬の比率は高まり、大企業では役員報酬の3割を役員報酬として認識し、残りを労務対価部分として取り扱います。
つまり会社の規模に応じて役員報酬のうちの7~9割を労務対価部分とみなすことになります。
このことは保険会社からの保険金不払い事件に発展することがあります。
保険会社から休業補償の支払い拒否された事件
事故の概要
キャラクターグッズのデザイン会社(従業員4名の零細企業)を経営していた代表取締役が交通事故に遭遇し、何ヶ月も仕事を休むことになり売上が大幅に減少していまします。
社長が取引先との商談を担当していたこともあり、事故による信用不安もあるため取引先も失ってしまいました。
その結果会社の売上は400万円から100万円台にまで減少し、著しい損害を受けてしまいます。同社はこの損失を休業損害として損害保険会社に請求しましたが、保険会社は保険金の支払いを拒否しました。
保険会社の不払い理由
会社役員の場合、休業損害は支払われないため
この事件の結末
裁判にならなかったケースなので、決着内容はわかりません。
零細企業である場合、役員報酬は全額が労働対価部分となります。
しかし社長の役員報酬は月額100万円と高額であり、保険会社も休業補償として役員報酬の全額を簡単に支払う訳にはいかなかった裏事情があったようです。
保険会社としては、じゃあいくらまでなら払えるのか?、一部でいいから支払って欲しいとは思うのですが、ゼロか100かのいずれかです。
会社に与えたダメージも非常に深刻であり、弁護士を通じて決着をはかることが大切だと思います。